そうやってみんながドルをどんどん買っていけば、売りがいくらあってもドルは下がらない。
また、枕にして寝るだけでなく少しでも儲けたいという人は、ドルを手に入れてドルで投資をする。 たとえばアメリカの国債を買ったり、アメリカの株式を買ったりするというようなことである。
そうすると、資金が運用できてまた儲かる。 そうした心理がニューョークの株価を押し上げているのだ。
これが今までの経緯である。 では、今後どうなるか。
経済成長率が高くて将来性もあるだろうと言われている国は、アメリカだけではない。 世界で一番成長率が高く、21世紀は間違いなく彼らのものになるだろうと言われていたのが、東南アジアだった。
その代表はタイであり、インドネシアだったのだ。 そのタイのバーツが急に狂い始めたのが、97年の7月2日。
その衝撃はあっという間に周辺国に波及し、そしてインドネシア経済はガタガタになってしまい、て、1552億ドル。 これが1997年の数字である。

1年間の額として想像ができないほど大きい。 それだけのドルが世界で売られているわけだから、ドルが売り超過でガタガタと下がっても仕方がない状態なのである。
その結果暴動が起き、大統領が辞任に追い込まれることとなった。 タイ・バーツはいかにして暴落したか払えなくなる。
そこでタイはバーツで払おうとしたのだろうけれど、売り主は「バーツでは受け取らない、ドルを持ってらっしゃい」という。 そこでドルを手当てするために、バーツを売ってドルを買う。
そうすると、バーツは下がる。 下がるとますます不安になって貸してくれなくなる。
今まで貸していた人はもう貸さなくなるし、それだけでなく、貸してた分を返せと言い出す。 そうしてあっという問にバーツは暴落し、タイの経済はおかしくなる。
それを防ぐためには、バーツを売られないよう、すなわちバーツを持っていたら得をするようにバーツの金利を上げるということを当局は考えた。 しかし、金利が上がると収益が低下するから企業がやっていけなくなる。
企業の収益が落ちて、株価が下がる。 株価が下がると、タイの経済の将来は暗いということで、またみんながバーツを売る。
そしてカネを引き上げる。 こうやって一直線にタイの経済は急落していったのである。
それが周辺国にも広がった。 しかし、これは「正常化」への過程だと言える。

従来が異常だった。 おかしな状態が何年も続いていたのである。
彼らがどうしてそのような事態に陥ったかというと、大きな貿易の赤字を続けながら、不足する資金を借りて経済を運営していた。 借りることができる範囲では、外国からモノを買い続けることができる。
必要なものを買い続ければ、国民は満足する。 必要な機械を買い、必要な部品を買えば、生産活動も順調になる。
雇用も確保される。 経済成長率は上がる。
こういう循環が何年にもわたってずっと続いてきたのに、ここにきて行き詰まってしまったのである。 なぜだろうか。
それはタイに対する信頼感がなくなったからだ。 直前まで信頼してカネを貸してた人が、貸せなくなったということである。

あまりにもたくさん貸しているところに、さらに貸し込んで、果たして返してもらえるだろうかーこういう不安感が生じた。 そうすると、とたんに今まで買っていたモノの代金がすでに金利を払えない可能性がある。
そういう極めてきわどいギリギリの状態が続いている。 こうした状況の中で、この先、為替相場がどう動くかを読まなければならない。
世界がいつまでドルを買い支えてくれるかどうかは、アメリカ経済への信頼感にかかっている。 それとともに、世界の「カネあまり」の問題でもある。
カネあまりの要因としては、ドルがどんどん増発されているということもあるのだが、そのほかにも、たとえばわが国には莫大なおカネがあまっている。 これを日本国内で運用しようと思っても、借りてくれる人がいない。
そこで金利がほとんどダダみたいに低くなる。 少しでも運用益を出そうと思ったら、金利の高いところへ投資をしようということになる。
といって、危ないところはダメだ。 ということで、安定的で金利の高いアメリカへの投資だということになる。
そして、投資をした人が現に得をしている。 たとえばアメリカの株を買った人は、二重の意味で得をしている。

それは、まず円を持っていってドルを買う。 1ドルを100円で買った人が150円になって5割も儲かる。
おまけに株価がいまや9000ドルだから、ここでも得をしている。 ほとんど倍アメリカはどうかというと、長年にわたる巨額の赤字、1000億ドルを超える貿易赤字を十数年続けている。
その間に、アメリカはよその国と違ってたくさんおカネを持っているから、持っていたおカネで払うことができたのである。 しかし、どんどん払った結果、なくなってしまった。
なくなったので、いま、借りてきて払っている。 世界の人は、いまアメリカに貸し続けているということになるわけだ。
では、これがいつまで続くかが問題だが、いつまでも続くことはありえない。 永遠にカネを借り続けるということはできないのだ。
アメリカはすでに金利を払えなくなった。 金利を払うためにさらに借金をせざるを得ない状態にある。
みんながドル紙幣を抱えているから今はいいのだが、それを本当に使おうとしたらこれはパニック状態になる。 自分だけがドルを持っていると思ったら他の人もドルを持っていて、あるモノを買おうとしたら値段が倍になって、ドルの価値が半減するといくらい上がった人もいるはずだ。
これが実績としてある。 1ドル150円、160円の方向へハリケーンが一つ来たことがきっかけになるかもしれない。
あるいは、政府高官の何らかの発言が引き金になるかもしれない。 タイのバーツにしても、そのきっかけになったのは香港の返還だったと見ることもできるのだ。
それぐらいきわどい状態が、これからも続くだろうと思っている。 結局、世界の人々がドルを買い続ければこれからもドルはじわじわと上がっていく。
しかし、下がるときは、不連続で大きく下がる。 いわゆる暴落である。

それは、ドルがそういう体質だからだ。 ドルの体質が本当に強いものであるなら、いったん落ちてもまたすぐ戻るということが考えられる。
しかし、ドルの基本体質は強いものではないから、いったん大きく落ちたらなかなか戻らないだろう。 いま、タイやインドネシアの経済が大きく落ち込んでいるけれども、落ちたところからどれだけ戻れるかというと、そんなには戻れないだろうと私は見ている。
それは今までが異常であって、それが正常化したということだからだ。 同じことがドルにも言えるわけで、どこかでドルが正常化する段階があるだろうと思う。
では、これからも続くのだろうか。 将来のことは誰にもわからない。
外国のことなんてよけいわからない。 わからない場合には、過去の実績をもとにして判断するのが人間の習性である。

過去の実績はといえば、アメリカの株に投資した人々がボロ儲けをしている。 「ではひとつ自分も」、というのがいまの風潮なのである。
さらに、ここに出てきたのが、ビッグバンに伴う新外為法。 これで海外投資が格段に自由になった。
これからますます海外投資が行われるだろう。 この範囲においてドルは買われるから、ドルは堅調。

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